木を見て森を見ず 浄土真宗 龍善寺(真宗大谷派 本山:京都東本願寺)早稲田納骨堂発
夏の間は浄土真宗 龍善寺(真宗大谷派)の早稲田納骨堂は涼しく快適で、お参りの方々も冷たいお茶を飲みながら、ホッと一息つかれているご様子でした。最近は、涼しさを越えた日もあり、温かいお茶が恋しくなりました。早稲田納骨堂では、1年中、冷たいお茶、温かいお茶をご用意しています。早稲田納骨堂へお参りの際には、ご自由にお選びいただき、寒さの折には、hotしていただきたく思います。
そんな10月の初旬、ビッグニュースが流れました。
10月2日は京都大学の本庶佑先生がノーベル医学生理学賞を受賞された翌日で、ワイドショーでは朝から大騒ぎでした。私も仕事が休みでしたので、いくつかのチャンネルでその報道を見ました。
偶々(たまたま)のご縁をいただいて、私はかつて、本庶先生の大学の生化学教室で事務関係者として基礎研究の世界を垣間見たことがあります。厳しかったその教室には二人の偉大な教授が率いる多くの研究者が、昼夜を問わない地道な実験を続けていらっしゃいました。今回、先生が受賞したことで、癌の新薬が注目され、光があたっていますが、本庶先生自身はインタビューの中で、研究者たちは最初から薬の研究をするために基礎研究をしているわけではないと話されています。研究者の方々の「知りたい」という知の欲求に向かっての地道なたくさんの実験が、今回、結果的に新薬に結び付いたということのようです。基礎研究の存在、大切さへの理解をも語られたかったご様子でした。
「木を見て森を見ず」・・ある化学者から聞いた言葉です。世間から見たら、木を見ているだけにすぎないように思われる研究者たちの地道な毎日。「いのちの不思議」にとりつかれ、その解明を志し、目の前の失敗に挫折せず、諦めずに歩む厳しい道を、誰からも理解されないことがあったとしても、それは「木を見て森を見ず」だと。結果が出るか出ないかは誰にも分からない研究に、遠く森を見ながら、森にロマンさえ感じながら長く、険しい道を歩む基礎研究の世界。「金剛堅固(こんごうけんご)の志」が必要です。
私たちのお念仏の道も同じようなところがあります。念仏と言われても、そんなことをしても悦びなど感じられない、そんなことをして何の意味があるのかと、私も念仏することも放棄してしまいそうなことが何度もあります。浄土真宗 宗祖 親鸞聖人の弟子のお一人、唯円も、『歎異抄』の中で、「念仏しても悦びもない、浄土へ行きたい気持ちも生まれてこない。どうしたらいいのでしょう。」と親鸞聖人に問いかけていらっしゃいます。
私達の生活は、苦しいことがたくさんあり、人を恨んだり、人のせいにしたり、苦悩の泥沼にはまっていくようなことは日常茶飯事。また、ある時は有頂天になったり。
浄土真宗は生活が修行です。その毎日の生活の中に森(仏さんの愛)への道を見出すことなど、思いも及ばないのが現実でしょう。木を見る事が精一杯の社会の中では、むしろ、「念仏?何それ!?」と一笑に付されるのがおちではないでしょうか。
そのために、浄土真宗は法話を聞くこと(聞法・もんぽう)をとても大切にしています。浄土真宗(真宗大谷派) 龍善寺の檀家、信徒の方々へのポイント制度(法話会に参加、法要で聴聞したこと、お寺に足を運んでいただいたことを見える化した制度)もその願いから作られたものです。
浄土真宗 龍善寺では、2か月に1度、通常、第2週の火曜日<次回12月は10日(月曜日)です。ご注意ください>に、横須賀市 真宗大谷派 長願寺 住職 海法龍先生による法話会があります。法話会後の茶話会も少人数で、自分の思いを直接、先生に問いかけたり、同朋と共感しあったり・・1人ではなかなか抱えきれないことも、ざっくばらんに分かち合えます。
日常の苦悩。愚痴。歓び。浄土真宗(真宗大谷派)龍善寺1階本堂の仏様の前で皆が仏様に向かって自分を問い、その問いを分かち合う時間です。
これまでご縁があった真実<まこと>を求めるいろいろな世界の先達は、愚かな私のような存在をも懐深く受け止めてくださり、多くの学びがありました。厳しいけれど、温かく。生化学教室に席を持った偉大な化学者お二人の身近で、掌(たなごころ)の上で過ごした短かった時間にも、覩見した化学の世界にも、真実<まこと>に向かう化学者達の、志に生きる姿を見せていただきました。
11月3日(土)文化の日、4日(日)は龍善寺の報恩講が勤修されます。浄土真宗が最も大切にする行事です。浄土真宗の宗祖 親鸞聖人のご命日(10月28日)を中心に京都 真宗大谷派本山・東本願寺、各地の浄土真宗の寺院でも勤修されます。浄土真宗(真宗大谷派)龍善寺 報恩講へ参加希望の方は事前に龍善寺へご連絡ください。お待ちしております。
早稲田納骨堂は、朝9時から、土日祝日は午後5時まで、平日は午後6時45分まで、お参りいただけます。早稲田納骨堂は行事の時には混雑いたします。ご留意いただきたく存じます。
秋の日は釣瓶(つるべ)落とし・・すっかり暗くなるのが早くなりました。寒さにむけ、ご自愛くださいますよう、浄土真宗(真宗大谷派)龍善寺、早稲田納骨堂、スタッフ一同、心より念じております。
合掌
釋尼至薫(20181015)