梅雨は「命」の季節
関東地方も梅雨に入りました。
私たちは、梅雨と聞くとジメジメして
鬱陶しいというイメージがあります。
しかしこの時期、よくよく足元を見てみると、
草木や虫たちが生き生きと活動を始めているのです。
水が無くては生きていけない私たちを含め色々な生き物
たちにとっての命の源の季節と言えます。
古くよりの仏教では、生き物を殺してはならないという
「不殺生戒」と言う戒律があります。
草木や虫たちが活発になるこの時期、
土の上を踏んで殺生をしないよう、出歩くのはやめましょうと言うのが、
仏教での「安居(あんご)」と呼ばれる時期です。
お釈迦様がいらした僧院の中で過ごして、修行に専念していました。
日本でも宗派によっては、この安居の修行をいまでも継承しています。
この「不殺生戒」をもっと徹底している宗教もあります。
インドのジャイナ教と言う宗教です。
マハーヴィーラ(前6世紀-前5世紀)を祖師とし、
苦行・禁欲主義をもって知られるインドの宗教。
この宗教では殺生どころか生き物を傷つけてもならないという教えです。
梅雨時には土の上を歩かない、座る時も箒で払ってから座る、
口に布をあてがい、口の中に虫が入ってこないよう気をつけるなど、
徹底しています。
ジャイナ教信者のほとんどが、商売を営んでいます。
なぜならば、ものを仕入れて、ものを売るだけで
何も殺生することがない生業だからです。
さて、私たちはどうでしょう。
毎日、ご飯、肉、魚、野菜など、たくさんの「いのち」をいただいています。
いただかなければ生きてはいけません。
学校での給食や自宅での食事の前に「いただきます。」といいますが、
何をいただいていているかというと「いのち」なのです。
私たちは直接牛や豚、鳥を殺してはいませんが、間接的に殺しているのです。
たくさんの「いのち」があってこそ、いま自分の「いのち」が支えられているのです。
数年前、給食費を支払っているから「いただきます」を言う必要はないと
学校に抗議した親御さんがいましたが、私たちが生き物を殺生している感覚のない
今の時代では仕方がないのでしょうか。
2005年にドイツで公開された「いのちの食べかた」
(監督ニコラウス・ゲイハルター)
を見れば、私たちが生き物をどのようにして殺し、
目の前の食べ物になるかが分かります。
私たちの周りにあるたくさんの「いのち」に気づき、感謝しながら「いただく」ことが
必要ではないでしょうか。
私は普通のサラリーマンでしたが、たまたまのご縁で浄土真宗に出逢い、
今まで感じ得なかった視点に、気づかさせていただいています。
浄土真宗が「気づきの仏教」と呼ばれる所以でしょうか。
安居の季節。
皆さん、雨の中で、ちょっと膝を曲げて足元の小さな命たちを
覗いてみてはいかがでしょう?
耳を澄ませて、新緑の草木に打つ雨音を聞いてみてはいかがでしょう。
目の前のたくさんの漲る「いのち」にきっと気づけるはずです。
そう「梅雨」はまんざら鬱陶しい季節ではありませんね。
合掌
副住職 石井祐司